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補聴器の構造

<デジタル補聴器の基本構造>
補聴器の基本的な仕組みは、マイクでひろった音をアンプで増幅してスピーカーで出力することです。 現在の補聴器はごく一部の補聴器を除いて、ほとんどがデジタル補聴器になっておりますが、アナログもデジタルもその部分は同じです。
デジタル制御の補聴器の場合、マイクから入力した信号を一度AD変換で数値化し、様々な処理を行ったのち、DA変換で電気信号にかえします。 以前のトランジスタなどの電気回路で制御していたときは、どうしても複雑な処理をしようとすると歪が生じてしまうため、出来ることに限りが ありましたが、現在では一度数値化してコンピュータ処理することで様々な複雑な処理を可能にしています。

◆マイクロホン◆
マイクロホンの基本的な働きは、空気の振動を電気のエネルギーに変換することです。
現在の補聴器にはマイクが複数付いているものが珍しくなく、複数のマイクを水平に近く並べることで、 そのマイクごとに入力する時間差や強さの違いを判断して、音の方向を掴もうと言う指向性を持たせるために複数のマイクを使っています。
30年近く前のアナログの時代から指向性を持たせた補聴器は存在しましたが、指向性マイクロホンを使用したもので、 波長の短い高音域にはある程度有効でしたが、波長の長い低音域にはほとんど効果がありませんでした。 現在のデジタル制御の指向性でもあまりマイク同士の位置が近いと認識が難しいため、 CICなどの超小型の補聴器にはシェル内のスペースの関係だけでなく着けることが出来なくなっています。

※各メーカーのRICタイプなどの補聴器が不思議な形をしているのも、マイクロホンを出来るだけ水平に設置したいからではないでしょうか?

◆イヤホン(レシーバー)◆
マイクロホンと逆の構造で、電気信号を音響エネルギーに変換するのがレシーバーの仕事です。
補聴器の中で最も修理の多い箇所でもあり、耳垢や湿気で音が弱くなったり歪んだりすることも多く、特に耳穴式補聴器の故障の中ではダントツです。
最終的に物理的なエネルギーを発揮するものですので、大きさに左右される部分もあり、 パワータイプの耳掛式補聴器などは筐体内部の1/3近くをレシーバーが占めています。
BOXタイプやRICタイプのようにレシーバーを交換できる補聴器ではレシーバーの交換をすることで、出力や音質を変えることもあります。

◆アンプ◆
デジタルアンプにおいては制御部分の演算を担っているチップの性能によって補聴器の機能が変わってきます。 処理速度が速ければそれだけ多くの仕事を同時にこなすことが出来るため、 補聴器も高性能なものになっていきます。チャンネルを増やして細分化していくごとに仕事量は増えるので、 チャンネル数の多い補聴器には高性能なチップが必要になります。
唯、処理能力が十分でない補聴器では入力してから処理するまでに時間がかかり、 出力までに数ミリセコンド(早いもので1000分の3秒以下、遅いものでは1000分の10秒程度)の遅れがでるものもあります。
アナログアンプにはそのような遅れはありません。

◆地デジのテレビには時報がない◆
昔のアナログテレビでは電波の到達と同時に映像が表示されていたため、NHKの正午のニュースなどで時報が流れていましたが、地デジ放送では届いた電波の情報をテレビが再処理するために時間がかかり、遅れが出てしまうため、正確な時報が表示できなくなっています。