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補聴器フィッティングの種類

◆代表的なフィッティング理論◆
ハーフゲインルール リビー法 ライバーガー法
ポゴ(POGO)法 バーガー法 NAL法
ミラー法

補聴器を難聴者にフィッティングする方法は数多くあり、そのどれもが全ての方に100%の効果を約束するものではありません。 現在まで様々な理論が開発されていますが、聴覚という感覚レベルの問題でもあり、絶対的と呼べるものはありません。
最初の前提としてオージオメータによる詳しい聴力測定があり、左右別語音明瞭度の測定など、必ず必要なものがあり、 そのほかにも留意する点がいくつかあります。

◆補聴器装用に関する留意点◆
@会話音の周波数帯とレベル及び語音了解に必要な領域(スピーチバナナ)、周波数特性、ダイナミックレンジ。
Aマスキング現象、周期性ピッチ。
BMCL・UCL
Cオープンイヤゲインなど。

日常会話の周波数帯域は100Hz〜10000Hz程度。最も強い声で86dB/SPL、最も弱い声で46dB/SPL。 会話音域の中で最も語音の了解に必要なのは400Hz〜3000Hz、更に重要なのが500Hz〜2000Hzとされます。 以上の結果から補聴器に要求される周波数帯域は500Hz〜3000Hz又は4000Hzで入力のダイナミックレンジは86dB−46dB=40dBでよいということになります。

マスキング現象や、周期性ピッチは500Hz以下の低音域がもつ特質ですが、マスキングは特にノイズが低周波数になるほど強くなるため十分配慮が必要になります。

MCL(快適値)を正確に測定することはとても難しく、検査する側の誘導や恣意的な要素もあり 、 常に同じ値を得ることは出来ないでしょう。計算上も諸説あり、閾値と不快値との中間と言う説と、 閾値と不快値の1/3閾値側にあるという説と、反対に1/3不快値側にあると言う説もあります。正確でないためこれを主な指標にするのは無理があります。
正常耳におけるUCL(不快閾値)は100dB〜120dB程度とされ、関係は
平均聴力レベル(dB) 40以内 50 60 70 80 90 100
UCL(dB) Dr.Kodera 110以内 120 125 130
Dr.Onchi 100 105 110 120
JOHNES 第2巻第3号 by Mr.Kodera,Audiology Japan Vol.28 by Mr.Omichi

オープンイヤゲインは耳栓はイヤモールドで外耳道を閉鎖することで効果が失われるため、補聴器を調整する場合、 失われたオープンイヤゲイン分を考慮する必要があります。
周波数(Hz) 250 500 1000 2000 4000 8000
補正値(dB) 0 0 6 12 16 16


関連情報 外耳


◆ハーフゲインルール◆
1mの距離での会話音を65dB程度として、補聴器を通して快適閾値を得るために必要な利得は、 純音でのANSI閾値の約半分であると 提唱しています。計算が単純でわかり易いため広く普及したフィッティング理論です。
周波数 250 500 1000 2000 3000 4000 6000
因子(÷) 2 2 2 2 2 2 2

◆リビー法◆
必要な利得は各周波数ごとの1/3で、250Hzはその値から5dBを、500Hzでは3dBを引いたものになる。
周波数 250 500 1000 2000 3000 4000 6000
因子(÷) 3 3 3 3 3 3 3
補正値 -5dB -3dB 0 0 0 0 0

◆ライバーガー法◆
必要利得は500Hzでは聴力レベルの1/3、1000Hzから4000Hzでは聴力レベルの1/2になります。
周波数 250 500 1000 2000 3000 4000 6000
因子(÷) 3 3 2 2 2 2 2

◆ポゴ(POGO)法◆
補充現象のある感音性難聴を前提とした方法で、伝音性難聴の場合は補正値を加えることになっています。大まかにはハーフゲインルールに近いものですが、そのまま適用すると低音域にマスキング現象が生じるので、低周波数帯域での利得を250Hzで-10dB、500dBで-5dB小さい値にする。
65dBを超えると利得が足りないとの事で、POGO2では補正がなされています。
周波数 250 500 1000 2000 3000 4000
因子(÷) 2 1.6 1.5 1.7 2 2
補正値 -10dB -3dB 0 0 0 0

◆バーガー法◆
バーガー法においては、補聴器の形状によって補正を行います。
マイクロホンが耳の後ろにある場合(耳掛式など)は、耳介効果の損失分を補正するために、2000Hzで2dB、3000Hzで3dBを加算します。
BOXタイプの場合は、ボディーバッフル効果(人体による影響)を補正するため、500Hzで利得を下げ、2000Hzで利得を増やします。
両耳装用の場合は3dB差し引きます。
伝音成分を補うために、気骨導差の1/5を装用者利得に加算する。
周波数 250 500 1000 2000 3000 4000
因子(÷) 2 1.6 1.5 1.7 2 2

◆NAL法◆
オーストラリアにあるナショナル・アコースティック・ラボラトリー(National Acoustic Laboratories)が考案したもので、頭文字をとってNAL(ナル)と呼ばれています。
様々な補正値を用いた計算を必要とするルールですので、現在のようなパソコンによるデジタル補聴器の特性計算に適しています。
周波数 250 500 750 1000 1500 2000 3000 4000 6000
因子 x+0.31×H(各周波数の聴力レベル)
2CC 耳掛式 1 9 12 16 13 15 22 18 12
耳穴式 -1 9 13 16 14 14 15 13 4
BOX 0 2 8 13 22 25 26 17
イヤシュ
ミレーター
耳掛式 5 13 17 22 19 24 29 24 21
耳穴式 2 12 16 21 21 23 25 25 19
BOX 0 6 12 19 28 35 33 23
※X=0.05×{(500Hzの聴力レベル)+(1000Hzの聴力レベル)+(2000Hzの聴力レベル)}


◆ミラー法◆

聴力レベル30dBまでは正常耳とみなし、30dB以上低下した閾値を30dBまで改善するもの。難聴の程度によって補聴閾値は変化しません。

<各周波数の必要利得>
250Hz:15dB
500Hz:20dB
1000Hz:25dB
2000Hz:30dB
4000Hz:30dB